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よくある質問の飾りが消えたあとの構造化データ

検索結果の見た目にかかわる仕組みは、この数年でずいぶん整理されてきた。中でも設置していたサイトが多かったのが、質問と回答を検索結果の中に折りたたんで見せるFAQのリッチリザルトだ。表示そのものは今年の五月に止まり、その後もSearch Console側の対応が段階的に外されてきた。最後まで残っていたAPIのサポートが、今月で終わる。

ひとつの表示形式が消えるという話にとどまらず、構造化データを何のために書くのかという前提が静かに動いている。過去に廃止された型の顔ぶれと、逆に細かくなっている領域を並べて見ると、その動きが見えてくる。

段階的に外されてきた対応が今月で終わる

時系列を整理しておく。FAQのリッチリザルトが検索結果に出なくなったのは五月七日で、同じ日にGoogleのドキュメントへ廃止の告知が入った。六月にはSearch Consoleの検索での見え方のレポートと、リッチリザルトテストからFAQの扱いが外れた。ドキュメント側でもFAQのリッチリザルトに関する記述そのものが削除されている。そして八月、Search Console APIからのサポートが外れる。

実務上の影響は、どこまで自動化しているかで変わる。管理画面を目視で確認しているだけなら、六月の時点でレポートが消えているので今月は何も起きない。一方、APIを叩いてレポートを自社ツールやスプレッドシートへ流し込んでいる場合、FAQの項目を参照している処理は今月のどこかで結果が返らなくなる。制作会社が保守で運用レポートを自動生成しているケースでは、ここが静かに壊れる。数字が出なくなるのではなく、項目そのものが無くなるという壊れ方なので、エラーで気づけるとは限らない点に注意したい。

付け加えると、Googleは表示をやめただけで、ページに書かれたFAQの構造化データを読むこと自体はやめていないと説明している。マークアップを急いで剥がす必要はない、という整理になる。

消えていった型に共通していたもの

廃止されたのはFAQだけではない。手順を検索結果に並べて見せるHowToは、モバイルでの表示が絞られたあと、二〇二三年九月にデスクトップでも出なくなった。教育系のサイトで使われていたPractice Problemは、今年一月にSearch Consoleとそのレポート機能からサポートが外れている。

共通しているのは、表示される機会がそもそも少なく、表示されても利用者があまり触っていなかった型だという点だ。Googleの説明でも、使われる頻度が低く利用者への価値が大きくない機能を整理した、という言い方をしている。逆に言えば、検索結果の面積は有限で、そこに何を出すかは常に取捨選択の対象だということでもある。

もうひとつ見落としやすいのが、FAQのリッチリザルトが後半では大きなサイトにしか出なくなっていたことだ。同じマークアップを書いても表示されるかどうかは相手次第で、中小規模のサイトでは書いても出ないという状態が先に来ていた。今回の廃止は、その状態を正式に確定させたに近い。

この経緯は、リッチリザルトを前提にページを設計することの危うさも示している。手順を並べる形式が有利だと聞いてHowTo用にページを組み直した制作現場は当時それなりにあったはずだが、その表示は数年で消えた。表示形式は検索側の都合で入れ替わるものだと考えておくほうが、長い目で見れば手戻りが少ない。

構造化データ全体が縮んでいるわけではない

廃止の告知が続いたことで、構造化データそのものを縮小していく方針なのではという受け取り方が一部で広がった。ただ、Googleはこれを明確に否定している。整理の対象はあくまで使われていない一部の型であり、基本的な情報の伝え方をやめるわけではない、という立場だ。担当者からは、表示形式は移り変わるものだが、タイトルタグやrobotsの指定のように手放してはいけないものもある、という趣旨の説明も出ている。

実際、記事、パンくず、事業所情報、商品、動画といった定番の型は今も現役で、廃止の予定は出ていない。中小企業のサイトで効いてくるのは元々このあたりで、FAQの有無で検索流入が大きく動いていたサイトはそう多くないはずだ。手を入れる優先順位を決めるときは、廃止された型の話より、こうした残っている型が正しく出力できているかを見るほうが実りがある。

商品や価格まわりはむしろ細かくなっている

縮小の反対側で、記述が細かくなっている領域もある。七月には、販売者向けの商品情報にcategoryプロパティが追加された。文字列でカテゴリ名を書く方法と、コード体系で指定する方法の両方が使えるようになっている。加えて、セール期間の扱いを説明する節が新設され、開始と終了の日時を表すvalidFrom、validThrough、そして表示価格の有効期限を示すpriceValidUntilの使い分けが整理された。

この方向は分かりやすい。人間が読む文章から機械的に取り出しにくい情報ほど、構造化データで明示する価値が残るということだ。質問と回答は本文を読めば分かるが、そのセール価格がいつまで有効なのかは本文の書きぶり次第で判別できない。だからこそ価格や在庫、期間といった要素は、むしろ書式が整えられていく。

通販をやっていないサイトでも、この考え方は流用できる。営業時間、所在地、対応エリア、料金の条件といった、本文中では表現がばらつきやすい情報を構造化データ側で揃えておくと、後から自分たちで検算しやすくなる。表示のためというより、データとしての整合性を保つための作業に近い。

付随して、期間を持つ情報には失効という考え方がついて回る点も押さえておきたい。終了日を書いた以上、その日を過ぎた記述が残っていれば、それは単に古い情報になる。構造化データを入れるということは、更新の責任を一つ増やすことでもある。誰がいつ見直すのかを決めないまま項目だけ増やすと、数年後に手をつけられない塊になりやすい。

口コミの扱いに条件が足された

七月下旬には、レビュースニペットのガイドラインにも追記があった。やらせのレビューや、報酬と引き換えに書かれたレビューについての基準が加わっている。星の数を検索結果に出す仕組みは以前から人気があるが、その分だけ、出所の怪しい評価を集めて表示させようとする動きも起きやすい。基準が明文化されたのは、そこに線を引く必要があったからだろう。

地方の事業者にとっては、他人事ではない話でもある。レビューを集める施策を外部の業者に任せている場合、その集め方がガイドラインに触れていないかは一度確認しておきたい。表示が止まるだけならまだしも、サイト全体の評価に影響が及ぶ形になると、回復に時間がかかる。

制作の現場で見直しておきたいところ

まず、FAQのブロック自体は消さなくていい。検索結果に出なくなっただけで、訪問者にとって質問と回答の形式が読みやすいことは変わらない。むしろ、リッチリザルト目当てで無理に質問形式へ変形させていたページがあるなら、この機会に読み物として自然な形へ戻すほうが素直だ。表示のために作られた文章は、たいてい読みにくい。

次に、構造化データの出所を把握しておきたい。WordPressで運用しているサイトの多くは、SEO系のプラグインやテーマが自動で出力している。プラグインを乗り換えたり、テーマを入れ替えたりしたときに、古い型と新しい型が二重に出ていたり、逆にどこからも出なくなっていたりすることがある。リッチリザルトテストやスキーマの検証ツールで、主要なページを何枚か抜き取って確認するだけでも状況はつかめる。

そして、レポートの自動化をしているなら今月のうちに参照箇所を確認しておく。APIの項目が消える変更は、画面を見ているだけでは気づきにくい。数年単位で運用するサイトほど、こういう小さな失効が積み重なって、いつの間にか誰も中身を保証できない状態になりやすい。

構造化データは、検索結果を飾るための道具から、ページの内容を機械に正しく渡すための道具へと、役割の重心が移りつつある。飾りが減ったぶん、書いた内容が正しいかどうかだけが残る。派手さはないが、こちらのほうが手入れのしがいはある。Google検索セントラルの更新履歴は日付順に並んでいるので、こうした変更を追うときの起点として使いやすい。

[1994-2002]
ITベンチャーの幹部として、8年間で数名の企業を500名以上の企業に成長させることに貢献。95年より独学でwebデザインを学ぶ。

[2002-2023]
米国法人のwebデザイン会社のCEOを務め数々の賞を受賞。

[2023〜]
AI事業開始に伴い、つくば市を拠点として株式会社RESONIXを起業。