サイトの表示速度を測る指標として、Core Web Vitalsはすっかり定着しました。ところが、この指標には長らく穴があると言われてきました。ページを読み込み直さずに中身だけを差し替える作りのサイトでは、最初の一回しか計測されないという問題です。Chromeの最新版で、この部分をブラウザ側で測る仕組みが正式に使えるようになりました。
Chromeの開発者向け資料によると、Soft Navigations APIと呼ばれるこの機能は、試験運用の期間を経て、2026年7月に公開された版から設定を切り替えずに利用できるようになったとされています。名前のとおり、ソフトナビゲーション、つまり読み込み直さない画面遷移を計測の対象にするものです。
これまで測れていなかった部分
従来のCore Web Vitalsは、ブラウザがURLを開いて新しい文書を読み込む、いわゆる通常の遷移を前提に設計されています。表示までの時間を示すLCP、レイアウトのずれを示すCLS、操作への反応を示すINPは、どれもそのページが開かれた時点を起点に集計されます。
JavaScriptで画面を組み立てる作りのサイトでは、二画面目以降はURLだけが書き換わり、文書の読み込みは起きません。ブラウザから見れば一枚のページがずっと開かれたままなので、二画面目の表示がどれだけ遅くても、最初の一枚の数字に埋もれてしまいます。逆に、最初の表示さえ速ければ全体が良好に見えてしまうこともありました。計測ツール側で独自に区切りを入れる回避策はありましたが、実装ごとに基準が違い、横に並べて比べられる数字にはなりにくい状態でした。
ブラウザはどこで区切りを判断するのか
新しい仕組みでは、ブラウザ自身が三つの条件をもとに画面の切り替わりを見分けます。利用者の操作がきっかけになっていること、利用者から見えるURLの変化を伴うこと、そしてその結果として実際に画面が描き直されること。この三つがそろったときに、ひとつの区切りとして扱われます。
あくまで推測にもとづく判定なので、公式の説明でも、サイトの作り方によっては拾いすぎたり拾いそこねたりすることがあると断っています。それでも、判定の基準がブラウザ側に統一されたこと自体に意味があります。計測ツールを乗り換えても、同じ考え方で区切られた数字が並ぶからです。
計測する側で増えたもの
開発者から見ると、パフォーマンス情報を受け取る仕組みに新しい種類の記録が追加された形になります。切り替わりそのものを表す記録と、切り替わったあとの主要な描画を表す記録が加わり、既存の各種タイミング情報にも何番目の遷移かを示す値が付くようになりました。これで、ひとつの記録がどの画面のものかを判別できます。
ただし、これらを直接扱うのはそれなりに骨が折れます。読み込み直さない遷移では最初の応答までの時間がゼロとして扱われるなど、通常の遷移とは数字の意味が変わる場面もあるためです。Googleが公開している計測用のライブラリweb-vitalsは、新しい版でこのあたりを内部で吸収するようになっており、URLの対応付けや数値のリセットを任せられます。自前で計測基盤を持っているところ以外は、ライブラリの更新に乗るほうが現実的でしょう。
今すぐ効いてくる話ではない
注意しておきたいのは、この計測結果が検索での評価にそのまま反映されるわけではない点です。実利用者のデータを集めたChrome User Experience Reportに、読み込み直さない遷移の分を加える予定は、いまのところ明らかにされていません。対応もChromium系のブラウザに限られます。つまり現時点では、自分たちで測って改善に使うための道具という位置づけになります。
WordPressで作られた一般的な企業サイトのように、リンクを踏むたびにページを読み込み直す作りであれば、直接の影響はほとんどありません。関わってくるのは、予約や検索の絞り込み、会員向けの管理画面など、画面の一部だけを差し替える作りを取り入れている場合です。最近はView Transitionsのように、通常の遷移でもアプリらしい見せ方ができる手段が増えており、境目は少しずつ曖昧になっています。
数字が見えるようになると、これまで感覚で語られていた二画面目が重いという話を、根拠を持って共有できるようになります。制作側と運用側で改善の優先順位を決めるとき、この差は思ったより大きいはずです。













