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拡張機能の旧仕様がストアから完全に消えた

ブラウザの拡張機能は、制作の現場で地味に効いてくる道具です。見出し構造の確認、色のコントラスト比の測定、通信内容の観察、テスト用のデータ差し替え。どれも本体の開発者ツールでできることではありますが、ワンクリックで呼び出せる拡張をいくつか常駐させている人は多いはずです。

その拡張機能の古い土台が、2026年8月31日にChromeウェブストアから完全に取り下げられました。長く予告されてきた移行の、最後の一段です。同じ週にはChrome 152の安定版で、別の系統の機能もひとつ静かに削除されています。予告された終わりが実際に来たとき、現場には何が残るのか。今回はそのあたりを整理してみます。

動かなくなった時期と、消えた時期は別

まず順番を整理しておくと、8月31日に起きたのは「急に動かなくなった」ではありません。Chromeの拡張機能の旧仕様は、2025年7月24日のChrome 138の時点で、すべての利用者、すべての配布チャンネルで無効化が完了しています。利用者が設定から手動で戻すこともできなくなりました。企業向けにはポリシーによる猶予が残っていましたが、それもChrome 139で撤去され、そのバージョンに上がった環境では一斉に効かなくなっています。

今回のできごとは、その先の段階です。ストアに残っていた旧仕様の拡張の掲載そのものが消え、更新の配信も、ストアからの再インストールもできなくなりました。Chromeの公式ドキュメントによると、Chrome 138以前で止めてある環境に入っているものはインストール済みの状態で残るものの、そこへ更新が届くことはないとされています。動作の停止が一年以上前、掲載の消滅が今回という、二段構えの終わり方になりました。

この二段構えは、利用者から見ると分かりにくい部分でもあります。無効化が進んだ時期には、拡張の管理画面に警告が出て、止まった拡張の代わりになるものがストアで案内される流れが用意されていました。案内する先そのものが今回なくなったので、これから同じ状況に出会った人は、自力で代替を探すことになります。制作側が顧客の環境を触るときには、この差を頭に入れておいたほうが説明しやすいはずです。

四年半かけて刻まれてきた予告

この移行は、ある朝いきなり通告されたものではありませんでした。公開されている支援終了の年表をたどると、ストアが新規の公開および限定公開の拡張の受け付けを止めたのが2022年1月、非公開の拡張についても止めたのが同年6月です。そこから二年ほど間があき、2024年6月に先行チャンネルで警告バナーの表示が始まり、旧仕様のまま残っていた注目枠のバッジが外されました。

2024年10月には安定版でも無効化が始まり、2025年3月末には既定で無効、ただし利用者が戻せる状態になります。同年7月にその戻す余地もなくなり、そして今回の掲載削除です。足かけ四年半、告知から実行までの期間としてはかなり長いほうだと思います。それでも最後の日には「もう入れ直せない」という形で影響が出るところが、この種の予告の難しいところです。

移行の途中で埋められていった機能の差

移行が長引いた理由のひとつは、新しい仕様で従来と同じことができるのか、という点が最初から解決していたわけではなかったからです。移行開始時の告知によると、この期間にユーザースクリプトの仕組みや、背景処理からDOMを扱うための画面外ドキュメントが追加され、通信の絞り込みに使うルールの上限も、あらかじめ同梱できる分が33万件、動的に足せる分がさらに3万件まで引き上げられています。

あわせて、ルール一覧の安全な更新であれば審査を数分で通す仕組みや、配信した版を巻き戻す機能も用意されました。同じ告知の時点で、活発に保守されている拡張の85%以上が新仕様に移っており、広く使われている通信の絞り込み系の拡張にも新仕様版が用意されていたと説明されています。外部の仕様変更に自分たちの実装を合わせていくとき、何が足りないかを出し合いながら進んだ例として読める部分があります。

移行を進めた側の説明では、新しい仕様の狙いは既存の機能を守りながら、安全性やプライバシー、動作の軽さ、そして信頼性を全体として底上げすることに置かれていました。実装者からの意見を受けて仕様を足していった、という経緯も添えられています。仕様の側が動かないまま期限だけが迫る形にはならなかったので、四年半という長さは、待たされた時間というより、埋め合わせに使われた時間と見るほうが実態に近そうです。

同じ週にもうひとつ外されたもの

8月25日に安定版となったChrome 152のリリースノートには、削除の項目がひとつだけ載っています。三者間のCookieについて現行の方針を維持するという発表を受けて、集計系のAPIが関連する一連の仕組みとあわせて廃止された、という内容です。長く議論されてきた計測手法の置き換えが、静かに畳まれた形になります。

多くの中小企業サイトでは、これに直接ぶつかることはないはずです。ただ、広告や効果測定のタグを入れたまま担当者が代わっている、というサイトは珍しくありません。自社で計測まわりの実装を抱えている場合は、リリースノートのこの行が自分たちに関係するかどうか、一度だけ確かめておくと安心だと思います。

手元の道具立てをどう見直すか

制作会社の側で今回の件が効いてくるのは、検証の手順に拡張機能を組み込んでいる場合です。旧仕様の拡張はもう入手できないので、検証用の端末を作り直したときに同じ環境を再現できません。手順書に拡張の名前が書いてあるなら、それが今も入手できるものかどうかを確かめて、置き換えるか、本体の開発者ツールでの手順に書き直しておくのが現実的です。

もうひとつ、古いChromeのまま固定してある検証端末に旧仕様の拡張が残っている場合は、そこに更新が届かない点を意識しておきたいところです。拡張は閲覧中のページの内容に触れる立場にあるので、直らないまま置いておく前提の道具としては扱いにくくなります。日常的に使う端末と、意図的に古い環境を保つ端末は、分けておくほうが落ち着きます。

顧客の環境について聞かれたときの答え方も、少し整理しておくとよさそうです。古い拡張が動かないという相談は、ブラウザ側の不具合ではなく、予定どおりの廃止によるものです。代わりのものを探すか、その作業を本体の機能で置き換えるか、という話に切り替えるだけで済みます。原因が分かっている変更は、伝え方さえ決めておけば手間の少ない部類に入ります。

予告を受け取る置き場所を決めておく

こうした変更を追いかけるコツは、情報を広く集めることよりも、見に行く場所を決めておくことにあります。ブラウザの各版のリリースノートには、追加された機能と並んで廃止と削除の項目が置かれています。拡張機能まわりの変更点も専用のページにまとまっていて、たとえばChrome 153では、URLの公開接尾辞を問い合わせるAPIの追加や、拡張のアイコンを既定でツールバーに固定する実験が告知されています。追加も削除も、同じ場所に同じ調子で並びます。

削除には猶予が用意されることもあります。Chrome 152では、ブラウザ側で行う変換処理の廃止に向けて、移行期間を確保するための試験参加の枠が始まりました。廃止の予告と、猶予の受け取り方が同じページに書かれているので、月に一度そこを開く習慣さえあれば、慌てる場面はかなり減ります。年表の最後の一行が自分の手元に届く前に気づけるかどうかは、結局のところ見に行く回数で決まります。

[1994-2002]
ITベンチャーの幹部として、8年間で数名の企業を500名以上の企業に成長させることに貢献。95年より独学でwebデザインを学ぶ。

[2002-2023]
米国法人のwebデザイン会社のCEOを務め数々の賞を受賞。

[2023〜]
AI事業開始に伴い、つくば市を拠点として株式会社RESONIXを起業。