今回は、認知バイアスのお話です。
読んでいただければ、誰でも「あるある」「わかるわかる」と思っていただける内容だと思います。
認知は「これだと認めること」で、バイアスとは、「傾向」とか「先入観」の意味になります。
その為、認知バイアスは「思考の傾向」とか「思考のクセ」「思考のバグ」などと表現されます。
個人的には、「思考のクセ」というのがしっくりきます。
誰でも、人それぞれ思考のクセがあり、それにより物事がうまく行ったり、うまく行かなかったりするのですが、どちらかというと認知バイアスのせいで、うまく行かないパターンの方が多いと思います。
つまり、自分の思考のクセを理解することによって、判断を誤りづらくなり、少し生きやすい世の中に見えてくると思います。
しかし、認知バイアスの怖いところは、自分の思考のクセを理解したと思っても、つもりになってるだけの事が多く、またそこにバイアスがかかります。
無意識ではなく、顕在意識で定期的に自分の思考を振り返り、それを無意識レベルで判断できるようになるまで落とし込んでいくことが大切です。
また、認知と認識は似て非なるものです。
認識は認知の上位互換といった感じです。
認知とは、物事をはっきりと認める事。
認識とは、物事の本質を理解して判断できる心の働きの事をいいます。
つまり、認知あっての認識になり、認知にバイアスがかかると、誤った認識を持つということになります。
物事の本質を見るためには、認知の段階でいかにバイアスをかけないかが重要になります。
認知バイアスは150種類以上ありますが、ここでは一般的なものをいくつか上げていきます。
興味が湧いた方は、さらに深掘りをしてみてください。
ハロー効果
メガネをかけてる人を見ると、勉強が出来そうとか、運動が苦手そうとか。
髪の長い男性を見ると、ミュージシャンとかサーファーとか。
ハローは、こんにちはのHelloではなく、光のHalloです。
要は目立つ部分です。人は人の目立つ部分で他の要素が歪められる事をハロー効果といいます。
これは日常的に利用されている効果です。
例えば、良い身なりのスーツ姿の人を見れば、しっかりした人で、信用できる人物と錯覚します。
なので、そう思って欲しくスーツを着る人もいます。
マルチ商法なんて、わかりやすいですよね。有名ホテルのカフェで話をします。
有名ホテルのカフェで商談、いかにもビジネスっぽいですよね。
ビジネスじゃりません、詐欺です。
このハロー効果は、最も使われていて、最もかかりやすい認知バイアスの1つだと思います。
最初の認知が間違うと、誤った認識に落ち入ります。
確証バイアス
自分に都合の良い情報しか認知できなくなる心理現象の事をいいます。
根本的に人は、自分の考えは変えたくないと感じます。
会議で、賛成と反対のふたつに割れたとしても、自分の考えを裏付けるエビデンスばかりを主張し、反対のエビデンスは偽造とまで思います。
この確証バイアスは、ほぼ全ての人が、どんな職業であれ、かかってるといっても過言ではありません。
特に政治や宗教、陰謀論者、占いなんかも、この確証バイアスが強固な傾向があります。
自分の考えは正しいと結論づけるのではなく、アップデート出来る伸び代があることを楽しむというか、自分を含め誰もが半分くらいは何かを間違ってると考えるのが、この確証バイアスから逃れる手段かもしれません。
根本的な帰属の誤り
例えば、何かの大会に出場したとしましょう。
残念ながら、良い結果を出すことが出来なかった。
こんな時、人は「昨夜良く寝れなかった」「少し右肩が痛んだ」などと諦めの原因を見つけます。
同じ大会に、友人も出場していたとしましょう。
友人も同じように良い結果が出ませんでした。
そんな時「あいつ全然練習してなかった」とか「基本的に取り組みが甘い」などと原因を見つけます。
なぜ同じような悪い結果が出ても、異なる原因と判断するのか?
人は自分のことに関しては、自分とは無関係な外的要因で失敗を正当化しようとします。
しかし、他人にはそれほど寛大ではなく、失敗するのはその人に落ち度があるからだと考えます。
逆に他人が成功すると、運がいいだけと結論付けます。
なぜこのような認知バイアスがかかるかというと、失敗を運命のせいにした方がずっと楽だからです。
これを「基本的な帰属の誤り」といいます。
頻度錯誤
これは何か新しい事や物に興味を持ったとします。
すると、その事や物が頻繁に目につき、神秘的と考えたり、運命とまで感じてしまう現象です。
例えば、今までスニーカーはアディダス派だったのに、ナイキのスニーカーを買ったとします。
そうすると街中至る所でナイキを履いてる人が目につきます。
欲しい車が見つかったとします。そうすると街中で同じ車が目につきます。
これは決して、神秘的でも運命でもありません。
誰にでも起こる頻度錯誤という現象です。
時間が経つとみんな忘れますので、それほど怖い認知バイアスでは無いのですが、これを神秘的とか運命感じちゃうとかいってると痛いです(笑)
計画錯誤
人は課題を遂行するのに必要な時間を過小評価する傾向にあります。
よく寝て、スッキリ目覚めた朝、やる気に満ち溢れています。
よし、今日はこれやって、あれも終わらせて、あそこにも行って、この事も終わらせよう。
1日の終わりに、振り返ると予定外の事が起こり、思ってたことの半分も終わらなかった現実。。。
これが計画錯誤です。
特にスケジュール表をパンパンに埋めるのが好きな人は、この計画錯誤にかかり遂行できない度に、いらないストレスを感じてるのでは無いでしょうか?
私もこの計画錯誤には頻繁にかかったので、スケジュール表はなるべくスッカスカにして、予定外の予定を入れています。
スポットライト効果
美容室に行って、前髪を思っていた以上に短く切られてしまったとします。
すると、過ぎ去る人、過ぎ去る人が自分の前髪を見て笑っているような気がします。
これがスポットライト効果です。
安心してください、誰も見てません(笑)
中高生で、前髪が決まらないと一日憂鬱なんて事をよく聞きますが、気にしてるの本人だけなんですよね。
周りにどう見られるかを気にするより、周りをどう見るかが大切な気がします。
達成バイアス
大きなタスクより、小さなタスク。
つまり時間のかかる仕事より、時間のかからない仕事を優先してしまうバイアスです。
有効的な思考だと思われがちですが、結果小さなタスクばかりこなし、大きなタスクに取り掛かれなくなります。出来ることからコツコツは大切ですが、これはちょっと植え付けられてるような感覚が否めません。
やりたいことへの挑戦もバランスよく必要だと思います。
現状維持バイアス
例えば、パソコンを覚えようとか。
副業をしようとか。
資格を取ろうとか。
転職しようとか。
何か新しいことを始めようと思うときにかかるバイアスで、中々それに取り掛かれないといった行動にブレーキのかかるバイアスです。
これは、新たなことを始めると危険という人間の本能で、部分的にはあってる場合もあると思いますが、それが何でも「新しいこと=危険」に陥ってしまうことです。
「光は闇よりも恐ろしい。」上手な表現だと思います。
やる理由より、やらない理由を見つけるのが天才的な感じです。
自分の中の天才には中々敵いません。。。
サンクコストバイアス
コスト、つまり時間やお金を多く注ぎ込んだ物の価値を高く見積もってしまう事をいいます。
例えば、株も含めたギャンブルとかで、たくさん投資した結果、損切りが出来ない状況だったり。
スポーツなんかもそうです。
1つのスポーツをやり続けると、いかにそのスポーツが素晴らしいという偏りがでます。
本当は、そのスポーツをよく知ってるから語れるだけで、他のスポーツが引けを取ってる訳では無いのですが、時間をかけた分、自分のやったスポーツが素晴らしいと高く見積もってしまったりする現象です。
学びとかでもあると思います、時間をかけて学んだことが、結果あまり意味がなくても、時間をかけた分意味があったと思いたいという心理現象です。
物事を好きになったり、大切に思ったり、自分の中での価値観が高いのは、全然アリだと思いますが、その価値観を人に押し付けるようになると危険な気がします。
これはビジネスでも依存させる時などによく利用される心理現象症です。
このサンクコストバイアスを克服するには「失敗を認める」が一番かもしれません。
サーフィンって超素晴らしいですよ!←かかってるやつ(笑)
正常性バイアス
これは、自分は大丈夫と思ってしまう現象です。
病気だったり、怪我や事故、震災、詐欺なんかもそうですね。
何事も起こる発生率はあり、その発生率に自分も含まれています。
自分はコロナにかからないと思っていて、かかった人も多いのではないでしょうか?
全てに過剰に不安になる必要はないと思いますが、起こることは起こるマーフィーの法則です。
自己奉仕バイアス
成功した時は、自分の才能のおかげで、失敗した時は他人や環境のせいにする心理現象です。
たまに見かけるジャイアンみたいな人です。
失敗を自己要因にしたり、失敗は成功への過程とみなした方が楽だし結果につながると思います。
フォールスコンセンサス
みんな自分と同じように考えると思う心理現象の事をいいます。
「えっあれ食べた事ないの?」とか「あそこ行ったことないの?」とか「これ買ってないの?」
のような、自分を多数派に属しているという安心したい気持ちから生まれます。
悪気なく人を傷つけたりする場合があるので、気をつけたいバイアスです。
例えば、「背が高い=モデルみたい」と思っている自分が、女性に「背が高いね!」と言ったとします。
その女性は、背が高いことがコンプレックスで傷つきます。この心理現象を理解していれば、誤解を招くワードは避けるようになり「モデルみたいに綺麗ですね」といったような言葉に変わります。
そんな意味で言ったんじゃないんだけどなぁ、思うことが多い人はこのフォールスコンセンサスという認知バイアスがかかっています。
ダニングクルーガー効果
能力が低い人ほど自分を過大評価し、能力が高い人ほど自分を過小評価する心理現象。
ことわざの「井の中の蛙大海を知らず」と一緒と思いがちですが、異なります。
余談ですが、井の中の蛙大海を知らずは、世間知らず的なネガティブ意味で使われますが、実は続きがありまして「井の中の蛙大海を知らず、されど空の深さを知る」という「狭い世界で自分の道を突き詰めたからこそ、その世界の深いところまで知ることができた」というポジティブな意味があります。
最近では、能力が高いのに自分を過小評価する自己肯定感の低い人が多い印象ですが、中々自己評価と他者評価がドンピシャってのも難しい気がします。
内集団・外集団バイアス
同じグループ内は味方、グループ外は敵とみなす心理現象です。
これは人類元々の生存本能からくるものだと思うのですが、近年の「分断」があたかも悪いことのように報じられ、同時に「多様性」が良いことのように報じらる、矛盾しか感じない煽り報道が拍車をかけてる気もします。しかも外部から見ると同じカテゴリーの方が敵対心が強いのが不思議です。
例えば、ビーガンがベジタリアンを悪く言ったりする感じ。
少年野球なんて意味わかんないくらいグループ属性がありませんか?
少年野球の話を聞いたときは「めんどくさっ」しか思いませんでした(笑)
情報バイアス
これはビジネスでも多く取り入れられています。
情報が多すぎると決断できないといった心理現象です。
ジャムの実験が有名です。24種類のジャムを試食販売するより、6種類のジャムを試食販売した方が購買率が上がったという実験です。
グループA(6種類)
・試食した人の割合:40%
・試食後の購入割合:30%
・全数の購買率:12%
グループB(24種類)
・試食した人の割合:60%
・試食後の購入割合:3%
・全数の購買率:1.8%
この実験で疑問に思うのは、試食販売ではなく、普通の陳列販売の場合に同様の結果が出るのかが気になります。24種類も試食したら糖分取りすぎでジャムを買う気が失せる気がするからです。
言えることは、たくさんの中から選べた方が良いと思いがちですが、適度な量というものがあります。
決定疲れを起こさせないというのが重要です。
単一原因の誤謬(ごびゅう)
成功も失敗も要因は1つだと思ってしまう心理現象。
「成功の要因は何ですか?」「失敗の原因は何ですか?」こんな質問をよく見かけます。
「ここまで日本経済が落ち込んだ原因は何でしょうか?」こんな質問を本気でしてる人もいます。
簡単に考えたい、簡単に理解したい、簡単に解決したい。
その気持ちはわかりますが、簡単に痩せる方法はありません(笑)
全ての物事はとても複雑なロジックによって導かれた結果に過ぎず、決して単一原因ではありません。
今回のお話の認知バイアスですが、これも研究されているものだけで150個以上あります。
一番重要な認知バイアスなんてないんです。
そもそも、認知バイアスとは、複雑なことを簡単に理解したいという脳の省エネモードから引き起こるバグです。
認知バイアスは、心理学の一部になるのですが、政治も宗教もビジネスも、ありとあらゆる業界が、心理学や脳科学を研究し、取り入れています。
だれもが、あるある!わかるわぁー!と思う内容だと思うのですが、その現象に名称があり、研究されていることは深く知られていません。
われわれ広告マンも、学ばざるをえない学問なのですが、一般的に悪用されるというか
あたかも自分の決断のように思わせることが出来て、それが多用されているので、誰もが学ぶことにより、生きづらさの軽減になればと思い、少し長くになりましたが認知バイアスの一部を紹介させて頂きました。
長文お付き合いありがとうございます。
Just be hopeful
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