ウェブサイトで「下にスクロールしていくと、画面に入った要素がふわっと動き出す」という演出はよく見かけます。これまでこの手の動きは、JavaScriptでスクロール位置を監視するか、専用のライブラリを読み込むのが定番でした。ところが最近のChromeに、こうした動きをCSSだけで指定できる新しい仕組みが加わりました。制作の手間が一段減りそうなので、いまのうちに内容を整理しておきます。
これまではJavaScript頼りだった
要素が画面に入ったタイミングでアニメーションを始めたい場合、多くの現場ではIntersectionObserverというJavaScriptの仕組みを使ってきました。要素が見えたことを検知し、クラスを付け外ししてCSSアニメーションを起動する、という流れです。
動かす方法としては十分ですが、監視するコードを書き、要素ごとに設定し、画面から外れたときの処理も考える、という作業が毎回ついて回ります。アニメーションを多用するページほど、JavaScript側の記述が積み重なっていきます。GSAPのScrollTriggerのような外部ライブラリを入れる手もありますが、読み込むファイルが増える分、表示速度への影響も気になるところです。
animation-trigger でCSSに寄せられる
新しく加わったのはanimation-triggerとtimeline-triggerという2つのプロパティです。ざっくり言うと、「どの位置に来たら」「どのアニメーションを」再生するかを、CSSの中だけで書けるようになります。
まずtimeline-triggerで、監視したい範囲に名前を付けます。たとえば要素が画面に現れる範囲をview()で指定し、そこに--tのような名前を割り当てます。次に動かしたい要素側でanimation-triggerにその名前を書き、入ってきたら順に再生、出ていったら逆に再生、といった動作を指定します。Chrome for Developersの解説によると、カードが順に現れる演出や、文字が飛び込んでくる表現などが、この仕組みで組めるとされています。
細かい調整も効きます。要素がどこまで入ってきたら再生を始めるか、どの範囲にいる間は動いた状態を保つか、といった境目を指定できます。画面の下端に少し入った瞬間から動かす、まだ半分見えていないうちは静止させておく、といった塩梅を、値を書き換えるだけで整えられます。
JavaScriptで書いていた「見えたら動かす」という一連の流れが、スタイルシートの数行に置き換わるイメージです。要素が増えても、監視用のコードを書き足す必要はありません。
スクロール駆動アニメーションとの違い
少し紛らわしいのが、以前から話題になっている「スクロール駆動アニメーション」との違いです。スクロール駆動のほうは、スクロール量そのものにアニメーションの進み具合を結びつけます。スクロールを止めれば動きも止まり、戻せば巻き戻る、という連動です。
今回のスクロールで動き出すほうは性格が異なります。ある位置を通過した瞬間に、決まった長さのアニメーションを頭から再生する動きです。スクロールの速さに関係なく、いったん始まれば最後まで再生されます。JavaScriptのIntersectionObserverでやっていたことに近く、用途もそちらに寄っています。両者は名前が似ていますが、狙う演出が違うので、目的に応じて使い分けることになります。
現場で使うときの見極め
便利な仕組みですが、2026年の時点ではChromeとEdgeで先行して使える段階で、ほかのブラウザはこれからです。すべての来訪者に同じ動きを届けたい場面では、まだ本命として据えるのは早いかもしれません。
とはいえ、この種の演出は「あれば嬉しいが、無くても中身は読める」性質のものです。対応ブラウザでは動き、そうでなければ静止したまま表示される、という前提で組めば、いまから取り入れても実害はありません。中小企業サイトのトップページで、見出しや写真をさりげなく動かす程度の使い方なら、JavaScriptを減らす一歩として試す価値があります。WordPressで運用しているサイトでも、テーマのスタイルシートに数行足すだけで組み込めます。演出のためにプラグインを増やさずに済むのは、管理する部品が少なくなるという意味でも扱いやすい点です。仕様が固まってほかのブラウザにも広がれば、スクロールに連動した演出はCSSで書くのが当たり前になっていくはずです。













